クラウドとローカルの音声入力:プライバシー・速度・精度の比較

クラウドとローカルの音声入力を比較:プライバシー・速度・精度

要点

  • ローカル音声入力はパソコン上で音声を処理し、音声モデルのダウンロード後はオフラインでも使えます。録音や文章の保存先は別途確認しましょう。
  • クラウド音声入力は音声をサーバーへ送り、パソコンの処理負荷を減らします。インターネット接続が必要です。
  • 速度は環境によります。性能に余裕のあるパソコンではローカルが速く感じられ、古いノートパソコンと安定した回線の組み合わせならクラウドが向いている場合があります。
  • 精度は修正にかかる時間で判断しましょう。自分の声で、名前や仕事の用語を含む同じ原稿を試してください。どちらかが常に正確とは限りません。
  • 普段の使い方で選びましょう。ネットなしで作業したい、音声をアップロードしたくないならローカル。パソコンの負荷を抑えたいならクラウド。切り替えられるアプリなら併用もできます。

クラウド音声入力とローカル音声入力とは

クラウド音声入力は録音をアップロードし、サーバーで処理して文章を返します。話している間に音声を送り続ける仕組みもあれば、録音が終わってから処理する仕組みもあります。

ローカル音声入力は、オンデバイス音声認識とも呼ばれます。ダウンロードしたモデルをCPU、GPUなどの対応チップで動かします。設定後は、インターネットなしでも音声認識ができます。

音声を文章にするのは、作業の一部分です。

  1. 音声の文字起こし:録音をどこで文章にするか。
  2. 必要に応じた書き換え:文字起こしした文章をどこで整え、言い換えるか。
  3. 保存:音声、履歴、完成した文書をどこに保管するか。

ノートパソコン上で音声を文章にした後、オンラインサービスで書き換えるアプリもあります。音声入力した文書が、その後オンラインに同期されることもあります。これらは音声認識を行う場所とは別の選択です。

アプリごとの詳しい違いは、音声入力アプリのプライバシー比較をご覧ください。

クラウドとローカルの早見表

比較する項目ローカル音声入力クラウド音声入力
音声の送信先文字起こしは端末内で完結サーバーへ送信
ネットなしでの利用設定後は可能不可
速度ハードウェアとモデルによる回線とサービスによる
明瞭な英語の認識精度適したモデルなら高い適したモデルなら高い
英語以外の言語インストールしたモデルの対応範囲内サービスの対応範囲内。デスクトップアプリでは対応言語が多い傾向
アクセント、名前、雑音モデルと音質が重要モデル、文脈、音質が重要
必要なハードウェア端末のメモリと処理能力を使う端末側の処理が少ない
バッテリーとファン処理が続くと消費電力やファンの動作が増える場合がある通常は端末側の処理が少ないが、通信にも電力を使う
ストレージ容量モデルファイルが大きい場合があるローカルの音声モデルは不要
AIによる書き換え別途、対応するローカルモデルがある場合のみ端末内で可能機能を提供するサービスで利用可能
初期設定モデルをダウンロードして読み込むログインして接続する

どちらを選ぶべき?

ローカルを選ぶとよいのは、端末内で扱うことが認められた機密性の高い下書き、旅行中の作業、ネットが不安定な環境、またはインストール済みモデルが得意とする対応言語を使う場合です。

クラウドを選ぶとよいのは、ノートパソコンでのローカル処理が重い場合、使う言語がオフラインの対応一覧にない場合、実際の仕事でオンラインのほうが誤認識が少ない場合です。Voicyの書き換えツールをすぐに使いたいときも、クラウドが分かりやすい選択です。

用途が変わるなら併用しましょう。非公開の下書きはローカルで音声入力し、機密性が低くクラウドの利点がある作業にはクラウドを使えます。ただし、その下書きを外部に共有してよいと思える場合を除き、オンラインの書き換えに送らないでください。

LinuxではVoicyが両方の方式に対応しています。ローカルの選択肢にはHandyもあります。ほかの候補はオフライン音声入力アプリの比較をご覧ください。

プライバシー:何がパソコンの外に送られるのか

ローカル音声入力なら、録音をアップロードせずに文章にできます。その端末で扱うことを所属組織が認めていれば、機密性の高い下書きに役立ちます。

その後の扱いも確認しましょう。アプリは録音をパソコンに保存するでしょうか。ほかの人が開けるでしょうか。文書はオンラインに同期されますか。AIで書き換える場合は、文章がサーバーへ送られるか確認してください。バックアップや任意で送る不具合報告にも、非公開にしたい内容が含まれる場合があります。

クラウド音声入力では、サービスが音声を受け取ります。次の2点は分けて確認する価値があります。

  • 保存:処理後に録音や文章を保存するのか、保存するならどれくらいの期間か。「Zero Data Retention(データを保持しない)」は、明示された設定や例外に従い、対象の内容を処理後に保持しないことを意味します。
  • 学習:サービス側がモデルの改善に内容を使えるか。「No training(学習に使わない)」は対象の内容を学習から除外するものですが、それだけでは何も保存されないという意味にはなりません。

どの機能が対象か、設定を有効にする必要があるか、保存した履歴をどう削除するかを確認してください。顧客の機密情報や規制のある業務では、どちらの方式でも先に所属組織のルールを確認しましょう。

Voicyでは、通常のオフライン音声入力は端末内で完結します。プライバシーポリシーによると、オンラインの文字起こしと後処理にはGroqを使い、Zero Data Retentionを有効にしています。ファイル文字起こし、再処理、任意の報告は別の操作です。それぞれ何を送信するかは、録音と文字起こしのプライバシーガイドで説明しています。

速度:待ち時間はどこで生まれるのか

日常の音声入力では、話し終えてからどれだけ早く文章作成を続けられるかで判断しましょう。ローカルはアップロードを待たずに済むので、Wi-Fiが不安定なときは反応が速く感じられます。パソコンで音声モデルを動かすのが重い場合は、クラウドのほうが速いこともあります。

ローカルモデルは最初の録音時に読み込み時間がかかる場合があります。大きなモデルや少ないメモリは、遅延の原因になります。クラウドは回線とサービスの応答時間に左右されますが、ストリーミング方式なら話している間に処理を始められます。

公開されているローカルのベンチマーク:ArgmaxのWhisperKitの結果では、Whisper large-v3 Turboの処理速度は、macOS 26.0搭載のApple M2で実時間の約12倍、macOS 15.7搭載のM4 Proで約17倍でした。2025年9月7日と16日の測定では、同じモデルの種類とコードのリビジョンc814caeを使い、LibriSpeechとEarnings22の10分間のサブセットでテストしています。2026年10月21日に確認しました。WindowsやLinuxのパソコンでは、性能が異なる場合があります。

公開されているクラウドAPIのベンチマーク:2026年10月21日の確認時点で、Artificial Analysisは、Groq上のWhisper large-v3 Turboを実時間の約192倍、OpenAIのGPT-4o Transcribeを約38倍と掲載していました。非ストリーミングのテストで、7日間の中央値を使い、通信時間も含みます。詳しくは測定方法をご覧ください。

これは異なるテストであり、直接対決の比較ではありません。倍率は録音済みの音声を処理する速さを示すもので、短い音声入力の文章がアプリに表示されるまでの速さではありません。自分で選ぶときは、アプリを開いて最初の1文も含め、話し終わってからの待ち時間を比べてください。

精度:ローカルはどこまで近づいている?

修正が少なくて済む方式を選びましょう。ローカルで普段の文章を正しく入力できるなら、精度のためだけにクラウドを使う必要はありません。顧客名や専門用語、自分の使う言語で誤認識が続くなら、同じ文章をオンラインでも試してください。

動かす場所よりも、音声モデルが重要です。同じモデルを端末内でもサーバー上でも動かせるため、音声をアップロードすれば自動的に認識がよくなるわけではありません。公開された英語の結果を見ると、ローカルで動かせるモデルがどこまで近づいているか分かります。

以下は、同じ時点のOpen ASR Leaderboardから、同じテストの列を取り出した数値です。単語誤り率(WER)は、正解の文章に対する単語の置き換え、抜け、余分な追加を数えたものです。低いほど優れています。

モデル実行できる環境LibriSpeech CleanのWERLibriSpeech OtherのWER
Parakeet TDT 0.6B v2ローカルで実行可能約1.3%約2.7%
Canary 1B v2ローカルで実行可能約1.8%約3.1%
Whisper large-v3ローカルで実行可能約1.6%約3.5%
Whisper large-v3 Turboローカルで実行可能約2.1%約3.7%
AssemblyAI Universal-3.5 ProクラウドAPI約1.1%約2.1%

出典:Open ASR Leaderboard、2026年10月17日時点のデータを10月21日に確認。LibriSpeechはオーディオブックの朗読音声で、「Other」は難易度の高い区分です。モデルの測定結果であり、Voicyや自分のノートパソコンのテストではありません。バージョンを固定したOpen ASRの結果をご覧ください。

ここで役立つのは、どんな場面でも勝つモデルを決めることではありません。優れたローカル対応モデルが、この英語の課題では十分に競争力を持つという点です。「ローカルは常に精度が低い」という見方は、この結果には当てはまりません。

難しい用途では、クラウドのほうがよい場合もあります。普通のノートパソコンからでも、端末内では実行しづらいモデルを使えるからです。言語対応、専門用語への対応、文脈の扱いに優れたサービスは、アクセント、専門用語、複数の言語を混ぜた発話で役立つことがあります。

ベンチマークで分かること、分からないこと

オーディオブックでの高い成績は参考になります。ただし、騒がしいキッチン、自分のアクセント、顧客の名前は別のテストです。メッセージを送る前に直す必要がある句読点や書式が、スコアに含まれない場合もあります。

自分の声で両方を試しましょう。普段の段落、名前や数字をいくつか、実際の仕事で使う1文を入れた短い原稿を用意します。マイクと部屋は変えずに使ってください。修正の数を数え、話し終わってからの待ち時間も確認しましょう。文字起こしそのものの時間と同じくらい、修正にかかる時間も重要です。

ほかに比べたい点

  • ストレージ容量:ローカルモデルはダウンロードと保存領域が必要です。Voicyのモデルカードには現在のダウンロード容量が表示されます。ほかのアプリから推測せず、そこで確認してください。
  • バッテリーとファンの音:ローカル処理はパソコンのリソースを使います。影響は環境によって変わります。
  • オフラインでの安定した利用:ローカル音声入力は電車、飛行機、通信障害の際に役立ちます。ただし、入力先のアプリ自体もオフラインに対応している必要があります。
  • 対応言語:Voicyは現在、オフラインで自動検出する25言語と、オンラインで50以上の言語を案内しています。使う言語をモデルカードで確認してください。Voicyの設定ガイドもご覧ください。
  • ファイル文字起こしと音声入力の違い:オフライン音声入力に対応していても、読み込んだ録音ファイルをオフラインで文字起こしできるとは限りません。Voicyのファイル文字起こしはオンライン機能です。

Voicyで両方の方式を使う方法

旅行やプライバシーのためにローカルを使い、クラウドも利用できるようにしたいなら、必要になる前に両方を設定しましょう。Voicyでは、まずオフライン音声入力用のモデルをダウンロードします。

  1. ネットに接続した状態でVoicyを開き、Offline mode(オフラインモード)へ進みます。
  2. モデルの対応言語とダウンロード容量を確認し、Download(ダウンロード)をクリックします。
  3. 検証が終わるまで待ち、表示されたらUse(使用)をクリックします。
  4. Transcribe on this computer(このパソコンで文字起こし)をオンにし、Model loaded and ready(モデルの読み込みが完了し、使用可能)になるまで待ちます。
  5. デスクトップアプリの入力欄に1文を音声入力します。

クラウド音声入力に戻すには、オフラインモードをオフにします。MacのオフラインモードにはmacOS 15以降が必要で、Windows 10/11とLinuxにも対応しています。ダウンロード時の問題や操作方法は、設定ガイドで解説しています。

Rewrite ModeとCustom Modesにはインターネットが必要です。ファイル文字起こしと再処理にも接続が必要で、オフラインモードがオンのときは音声を送る前にVoicyが確認します。

無料トライアルには30分の録音時間が含まれ、クレジットカードは不要です。トライアル後は有料のアプリです。Voicyの設定ガイドをご覧ください。

よくある質問

ローカル音声入力のほうがプライバシーを守れますか?

文字起こしのために音声をアップロードせずに済みます。ただし、機密情報を音声入力する前に、録音の保存、オンラインでの書き換え、文書の同期についても確認してください。

クラウド音声入力のほうが精度は高いですか?

必ずしもそうではありません。処理する場所より、モデル、言語、録音の状態が重要です。自分の声と仕事で使う言葉で試し、必要な修正を比べましょう。

ローカル音声入力のほうが速いですか?

適したパソコンなら速くなることがあり、特にWi-Fiが不安定なときに役立ちます。古いノートパソコンではクラウドのほうが速い場合もあります。話し終わってからの待ち時間を比べてください。

インターネットなしでも音声入力できますか?

はい。対応するローカルモデルをダウンロードし、使える状態にしておけば可能です。VoicyはMac、Windows、Linuxでオフライン音声入力に対応していますが、書き換え、ファイル文字起こし、過去の録音の再処理にはインターネットが必要です。

ローカル音声入力にはGPUが必要ですか?

必ずしも必要ではありません。CPUで動くソフトもあれば、対応する高速処理機能が必要なアプリもあります。モデルをダウンロードする前に、自分のパソコンがアプリの動作要件を満たすか確認してください。

クラウドとローカルの音声入力を切り替えられますか?

両方に対応するアプリなら可能です。Voicyではモデルをダウンロードし、「Transcribe on this computer」をオンにするとローカルで音声入力できます。オフにするとクラウドに戻ります。

まとめ

文字起こしを端末内で完結させたい、ネットなしで作業したいという場合はローカルを選びましょう。対応言語、モデル、必要なパソコン性能の面で仕事が楽になるなら、クラウドを選びましょう。

すべての人に共通する答えを出す必要はありません。大切なのは、自分の修正と待ち時間が少なくなる方式です。Voicyを無料でダウンロードして、トライアル中に両方を試し、自分の声で判断してください。